いい歳(58歳)になってきたので、ちょっと人生を振り返ってみた。

最近、これから何をやろうか考えている。
建機の仕事も、そろそろ曲がり角に来ている。
ゲストハウスも続けていくけど、世の中はずいぶん変わった。
58歳。
いい歳である。
そろそろ一度くらい、
これまで自分が何をしてきたのか、振り返ってみてもいい。
そう思って、今までの人生をチャッピーに話して、
はむちょっとまとめてみて。
と頼んでみた。
すると、
普通の振り返りではなく、
映画のPRみたいなものが出来上がった。
読んでみる。
「いやいや、これは盛りすぎやろ。」
と思う。
しかし困ったことに、
だいたい本当である。
『はむ 〜なぜかまだ生きている男〜』
――これは、成功者の物語ではない。
調子に乗り、転び、立ち上がり、また調子に乗る。
それを58年間繰り返してきた男の物語である。
主演:はむ
原作:本人
脚本:だいたい勢い
監督:成り行き
ジャンル:本人にも不明
制作費:かなり使った
回収見込み:本人も知らない
なお、
ほぼ実話である。
そこが一番怖い。
第一章 1968年、何かが生まれてしまう
1968年4月7日。
日本のどこかで、
一人の男が誕生した。
後に、
不良少年になり、
少年院に2回入り、
指名手配され、
逃亡し、
自首し、
23歳で独立し、
会社を大きくし、
自分で潰し、
台湾へ渡り、
ゲストハウスを始め、
コロナ禍では中古建設機械を売り始め、
58歳になった現在も、
「次、何やろ?」
と言っている男である。
こうやって一気に書くと、
完全に嘘くさい。
しかし、この時点では、
本人も何も知らない。
当然である。
赤ちゃんだからである。
第二章 神童、爆誕。
幼少期。
なぜか周囲の大人たちが、
「この子、賢いね」
「頭いいねえ」
などと言い始めた。
たぶん、
ちょっと物覚えが良かったのだろう。
あるいは単に、
大人が子供によく言う、
普通の褒め言葉だったのかもしれない。
しかし、
幼いはむ少年は、
そこから非常に大胆な結論を導き出した。
「なるほど。俺は天才なんや。」
誰もそこまでは言っていない。
しかし本人の中では、
この日、
神童認定が正式に完了した。
後に長年続く、
「まあ、なんとかなるやろ」
という、
根拠の薄い自信の原型である。
この勘違いがなければ、
もう少し平穏な人生を送れた可能性がある。
しかし、
平穏だった場合、
このブログはここで終わっている。
第三章 小学生、まだバレない
小学校時代。
神童設定は、
意外にもまだ持ちこたえた。
勉強もそれなり。
人前に出るのも嫌いではない。
そしてついには、
児童会長。
本人は思った。
「ほらな。やっぱり俺、いけるやん。」
勘違いは、
さらに強固になった。
先生から見れば、
そこそこ将来有望な少年だったのかもしれない。
ただし、
あちこちで喧嘩していた件については、あまり知られていない。
表では児童会長。
裏では喧嘩。
この頃すでに、
後の人生に必要となる、
人前に立つ能力と、問題を起こす能力
の両方を身につけていた。
第四章 中学、神童キャンペーン終了
そして中学校。
ここで、
長年続いてきた神童キャンペーンが、
突然終了する。
化けの皮が剥がれた。
勉強より面白いものを見つけてしまった。
遊び。
喧嘩。
悪い仲間。
そして、
不良少年。
小学校時代の先生が見たら、
きっと言っただろう。
「児童会長、どこ行った?」
本人にも分からない。
それでも、
なんとか中学校は卒業した。
ここまでは、
まだよかった。
問題は、
ここからである。
第五章 卒業後の進路、少年院。
普通なら、
高校へ行く。
就職する。
専門学校へ行く。
将来について考える。
はむ少年が進んだ先は、
少年院。
学校案内には載っていない進路である。
そして、
出てきた。
普通なら、
ここで反省する。
人生をやり直す。
しかし、
もう一度入った。
2回である。
一回目で何を学んだのか。
その点については、
本人にもいろいろ言い分があるだろう。
しかし、
結果だけ見れば、
2回である。
神童。
児童会長。
不良。
少年院。
少年院。
まだ人生の序盤。
展開が早すぎる。
第六章 出院。そして指名手配。
二度目の少年院を出た。
今度こそ、
真面目な人生が――
始まらなかった。
また問題を起こし、
今度は、
指名手配。
映画だったら、
そろそろプロデューサーが言うところである。
「主人公に事件を起こさせすぎじゃないですか?」
しかし、
脚本家はいない。
実話だからである。
そして、
逃げた。
第七章 逃亡中、なぜか真面目になる
逃亡生活。
普通なら、
ここからさらに悪い方向へ行きそうなものである。
ところが、
人生とは分からない。
この男、
逃げながら真面目に働き始めた。
順番がおかしい。
働く。
仕事を覚える。
汗をかく。
金を稼ぐ。
人から必要とされる。
すると、
それまでとは違う感覚が生まれた。
「働くの、悪くないな。」
そして、
少しずつ思い始める。
「このまま逃げ続けるのも違うな。」
人生で初めて、
本気で自分の人生を変えようと考えた。
そこで取った行動が、
自首。
逃げていた男が、
自分の足で戻った。
裁判。
結果、
執行猶予。
そして、
社会へ戻ってきた。
ここから、
映画のジャンルが、
犯罪映画から企業ドラマへ突然変わる。
第八章 働く。働く。働く。
社会に戻った。
とにかく働いた。
働く。
働く。
働く。
働く。
働く。
働く。
それまで遊びや喧嘩に使っていたエネルギーが、
全部、
仕事へ向かった。
すると、
恐ろしいほど働けた。
建設。
プラント。
現場。
人。
技術。
仕事。
信用。
全部覚えた。
そして、
23歳。
普通なら、
まだ会社で先輩に怒られているくらいの年齢である。
はむは、
独立した。
第九章 元不良少年、社長になる
建設・プラント関係の業界。
ここで、
はむの妙な能力が、
全部ハマった。
度胸。
行動力。
人付き合い。
知らない人とも普通に喋る。
決断が早い。
そして、
とにかく働く。
仕事を取る。
人を集める。
現場を回す。
また仕事を取る。
会社が大きくなる。
金が動く。
かつて少年院にいた青年が、
気がつけば、
社長になっていた。
映画なら、
ここで感動的な音楽が流れる。
「人は変われる。」
「努力は報われる。」
夕日に向かって歩く主人公。
エンドロール。
――で終わっていれば、
かなり綺麗な人生だった。
しかし、
この映画はまだ全然終わらない。
第十章 成功したので、自分で潰す
仕事はうまくいった。
金も入った。
会社も大きくなった。
普通なら、
ここから堅実な経営者になり、
資産を作っていく。
ところが、
この男には昔から、
「これ、面白いんちゃう?」
という、
人生を不安定にする非常に危険なプログラムが搭載されている。
変な投資。
遊び。
また投資。
また遊ぶ。
そして、
飲む。
飲む。
飲む。
結果、
会社は潰れた。
競合に潰されたわけではない。
巨大企業に負けたわけでもない。
かなりの部分、
本人のせいである。
誰が会社を作ったのか。
本人。
誰が会社を大きくしたのか。
本人。
誰が会社を潰したのか。
だいたい、
本人。
非常に、
効率が悪い。
第十一章 そして、なぜか台湾へ
会社を潰した。
普通なら、
再就職する。
地元へ戻る。
生活を立て直す。
少し大人しくする。
そういう選択肢がある。
はむは、
台湾へ行った。
なぜだ。
本人なりの理由は、
もちろんある。
しかし、
ここまでのあらすじだけを読んでいる人には、
全く意味が分からない。
とにかく、
台湾へ渡った。
そして、
帰らなかった。
住んだ。
第十二章 そして、なぜかゲストハウス
台湾。
台南。
普通なら、
「いい街やなあ」
で終わる。
この男は、
「ゲストハウスやったら面白いんちゃう?」
と思ってしまった。
またである。
この男の人生において、
「面白そう」は、だいたい事件の前兆である。
こうして台南に、
哈木家(はむ家)
が生まれた。
第十三章 世界中の知らん人を家に泊める
最初から、
完璧な経営計画があったわけではない。
MBAもない。
ホテル経営のエリートでもない。
あるのは、
勢いと人間力。
客が来る。
喋る。
飲む。
友達になる。
また来る。
友達を連れてくる。
スタッフが来る。
ヘルパーが来る。
外国人が来る。
また喋る。
また飲む。
気がつけば、
宿泊施設というより、
「はむという男の家に、世界中の人間が出入りするシステム」
になっていた。
予約サイトから普通に宿を取った旅人は、
おそらく、
そこまでの展開を想定していない。
第十四章 2020年、世界が止まる
2020年。
コロナ。
国境が閉まった。
飛行機が止まった。
観光客が消えた。
ゲストハウスから、
客が消えた。
ラスボス登場である。
普通なら、
撤退を考える。
はむも、
いろいろ考えた。
そして、
昔の建設・プラント業界の経験と人脈を引っ張り出した。
始めたのが、
中古建設機械の売買。
宿屋の次が、
ショベルカー。
意味が分からない。
しかし、
本人にとっては極めて合理的な判断だった。
第十五章 人は動けない。しかし建機は動く。
コロナ禍。
人間は、
自由に国境を越えられない。
観光客も来ない。
しかし、
ショベルカーは海を渡った。
日本。
台湾。
建機。
会社。
人脈。
電話。
交渉。
また電話。
昔の経験が、
数十年後、
突然役に立った。
気がつけば、
ゲストハウスの老板が、
巨大な鉄の塊を右から左へ動かして金を生んでいた。
こうして、
また生き残った。
少年院でも終わらなかった。
指名手配でも終わらなかった。
倒産でも終わらなかった。
コロナでも終わらなかった。
理由はいくつかある。
行動力。
人脈。
経験。
そして、
おそらく、
しぶとい。
かなり、
しぶとい。
第十六章 コロナが終わったので、全部やる
世界が再び動き始めた。
普通の経営者なら、
「まず本業を立て直そう。」
となる。
はむは違った。
全部やろうとした。
ゲストハウス!
建機!
二号店!
グッズ!
SNS!
YouTube!
LINE!
そして――
BAR!!
なぜだ。
誰も止めなかったのか。
おそらく、
止めた人はいた。
聞かなかったのである。
そして最近、
本人は言っている。
「俺、一点突破の方が得意や。」
これについては、
現在、審議中である。
第十七章 Hamu Bar、まだ出来ていない
そして、
Hamu Bar。
誕生――
していない。
まだ、
未完成である。
排水。
水道。
トイレ。
カウンター。
壁。
やることは、
まだある。
しかし、
なぜか、
メニューは完成している。
台湾ビール。
焼酎。
ウイスキー。
コーヒー焼酎。
老板手沖咖啡。
そして、
営業時間についても、
すでに思想だけ完成している。
老闆在才營業
老板がいる時だけ営業。
店は、
まだ完成していない。
しかし、
営業方針だけは完成している。
さらに、
真的很想喝?傳LINE給我
本当に飲みたいならLINEして。
まだ店も出来ていないのに、
客への案内は完成している。
普通なら、
店を作ってから、
メニューや営業時間を考える。
この男は、
世界観から作る。
工事は、
あとである。
第十八章 58歳、電話番号を本気で選ぶ
2026年。
58歳。
普通なら、
年金。
健康。
老後。
資産形成。
そんなことを考え始める年齢である。
はむも、
人生について、
真剣に考えた。
そして、
携帯番号を選び始めた。
しかも、
異常に真剣に。
候補番号を大量に並べる。
風水。
数秘。
語呂。
誕生数。
台湾での番号の古さ。
あらゆる角度から検討した。
途中から、
電話番号を選んでいるのか、人生を選んでいるのか分からなくなった。
そして、
厳正なる審査の末、
一本の番号を選んだ。
番号?
それは書かない。
そこまでアホではない。
本人は満足した。
運命が変わったかどうかは、
まだ分からない。
なお、
世界経済には、
今のところ何の影響もない。
第十九章 そして、普通に転ぶ
58歳。
いろんなことを、
やりすぎた。
ゲストハウス。
建機。
未完成のバー。
SNS。
YouTube。
そして、
次の仕事。
頭の中では、
朝から晩まで、
何かが動いている。
さすがに疲れる。
普通なら、
ここで休む。
はむは、
酒を飲んだ。
疲れている。
飲む。
友達が来る。
飲む。
楽しくなる。
また飲む。
飲む。
飲む。
飲む。
そしてある日、
転んだ。
ここまでの人生、
少年院に入ったり、
指名手配されたり、
会社を潰したり、
台湾へ渡ったり、
コロナが来たり、
いろんな意味で転んできた。
しかし今回は、
普通に地面で転んだ。
58歳。
身体中が痛い。
膝も痛い。
頭もボーッとする。
それでも翌朝、
5時。
なぜか仕事を始める。
そして、
朝6時。
58年間、
走り続けてきた男が、
ついに人生の真理にたどり着いた。
「……寝よ。」
二度寝した。
正しい。
非常に正しい。
少年院。
指名手配。
倒産。
海外移住。
コロナ。
数々の困難を越えてきた男が、
58歳にしてようやく身につけたもの。
疲れたら寝る。
遅い。
あまりにも遅い。
第二十章 58歳にして発見した最大の敵
そして最近、
はむは、
ようやく気づいた。
「俺、ずっと焦ってるんちゃうか。」
何かしていないと、
落ち着かない。
休んでいると、
頭の中から声がする。
「なんかやった方がええんちゃう?」
一つ仕事をしていると、
「もう一個できるんちゃう?」
何もしないと、
「このままでええんか?」
うるさい。
非常にうるさい。
考えてみれば、
はむの最大の敵は、
少年院でもなかった。
指名手配でもなかった。
倒産でもなかった。
コロナでもなかった。
予約サイトでもなかった。
頭の中に住んでいる、
「何かせなあかん君」
だった。
そして58歳。
ついに、
淡々と暮らす練習
を始めた。
これは場合によっては、
少年院から更生した時より、
難しい。
第二十一章 2026年、また曲がり角
コロナ禍から始めた、
建機ビジネス。
この仕事も、
市場が少しずつ枯れてきた。
ゲストハウスは、
続ける。
しかし、
台湾の旅行市場も変わった。
国内旅行は以前ほど強くない。
海外へ出ていく人も増えた。
日本から来る人にとっても、
為替は厳しい。
夏休みなのに、
部屋が空く。
さすがのはむも、
強い危機感を持った。
そして、
また言った。
「次の道を探さないといけない。」
昔なら、
ここで5個くらい、
同時に始めていた。
しかし今回は違う。
「ゲストハウス以外の、何かひとつ!」
58歳。
ついに、
「ひとつ」
という概念を習得した。
人間、
何歳になっても成長できる。
第二十二章 60歳、屏東へ?
そして、
この男。
最近また、
妙なことを言い始めている。
「60歳になったら、屏東に行きたい。」
屏東。
しかも、
便利なところではない。
「よく分からない、ど田舎がいい。」
なぜだ。
普通なら、
58歳くらいから、
病院まで何分か。
スーパーは近いか。
交通は便利か。
そういうことを考える。
この男が重視する条件は、
「こんなところで?感」
である。
つまり、
「なんでこんなところに日本人がおるん?」
と言われたいのである。
幼少期から続いている、
人と違うことをしたい病
は、
どうやら治っていない。
最終章 なぜかまだ生きている男
1968年。
ちょっと褒められた。
自分を天才だと勘違いした。
児童会長になった。
喧嘩した。
不良になった。
少年院に入った。
出てきた。
また入った。
指名手配された。
逃げた。
なぜか働き始めた。
自首した。
また働いた。
働いた。
働いた。
働いた。
23歳で独立した。
成り上がった。
調子に乗った。
投資した。
遊んだ。
飲んだ。
飲んだ。
飲んだ。
会社を潰した。
なぜか台湾へ行った。
ゲストハウスを作った。
世界中の人と出会った。
コロナが来た。
客が消えた。
なぜか建機を売り始めた。
生き残った。
コロナが終わった。
いろんなことを始めた。
バーまで作ろうとしている。
まだ出来ていない。
電話番号を、
風水まで使って真剣に選んだ。
番号は書かない。
そこは学習した。
そして、
酒を飲んだ。
転んだ。
また起きた。
考えてみれば、
この男の人生は、
ずっとこれである。
うまくいく。
調子に乗る。
何か始める。
転ぶ。
困る。
考える。
そして、
なぜか別の方向へ走り出す。
普通なら、
もう少し学習する。
しかし、
学習してしまっていたら、
おそらく、
この人生にはなっていない。
58歳。
また、
次の仕事を探している。
普通なら、
「そろそろ落ち着こう」
という年齢なのかもしれない。
しかし、
この男の場合、
どうやら第二部が始まるらしい。
――人生とは何か。
はむの場合、
おそらく、
「なんか面白そうやから、やってみた。」
の積み重ねである。
神童だと思ったら、
だいたい勘違いだった。
真面目になったと思ったら、
会社を潰した。
日本で潰れたと思ったら、
台湾へ行った。
台湾で宿屋になったと思ったら、
コロナでショベルカーを売り始めた。
ショベルカーを売っていたと思ったら、
バーを作り始めた。
そろそろ落ち着くのかと思ったら、
屏東のど田舎へ行こうとしている。
もう、
よく分からない。
しかし、
振り返ってみれば、
成功した人生というより、
何回も人生を作り直してきた。
そしてそのたびに、
なぜか、
本人にしか作れない人生になっていった。
そして今日。
ゲストハウスは続ける。
建機の次を探す。
場所に縛られない仕事を、
ひとつ作る。
そしていつか、
屏東の、
「誰がこんなところ来るねん。」
という場所へ行く。
広い土地。
空。
コーヒー。
酒。
そして、
よく分からない日本人のおっさん。
そこへ、
誰かがやって来る。
そして、
聞くだろう。
「なんでこんなところに住んでるんですか?」
はむは、
たぶん答える。
「知らん。なんか面白そうやったから。」
『はむ 〜なぜかまだ生きている男〜』
神童だと思っていた。
だいたい勘違いだった。
不良になった。
少年院に2回入った。
指名手配された。
自首した。
社長になった。
自分で会社を潰した。
台湾へ行った。
宿屋になった。
コロナで建機屋になった。
酒を飲んだ。
転んだ。
また起きた。
何度転んでも、なぜか前に転んでいる。
――1968年より絶賛上映中。
ここまで読んで、
「これ、ほんまか?」
と思った方へ。
安心してください。
書いた本人も、
そう思っています。
完
……ではない。
つづく。








